雪菜ちゃんの2019年6月 舞台話
舞台と推しと友達と恋愛に悩む雪菜ちゃんの6月の話。
※小説です
※ポエムです
※8500文字もある
※真面目に読まないでください
※気分を害する可能性があります
※自己責任で読んでね
※時系列ぐちゃぐちゃ
※フィクションです
***
「出会い系アプリ登録したんだよね」
「嘘でしょ」
真面目な友人だった。頭が良くて。大人しくて。クラスに一人はいる優等生。学生時代からの大事な友人。
彼氏が欲しい。結婚したい。そろそろ将来を考えなきゃまずい。言いたいことは分かる。分かるけど何故出会い系に走ったのか。突っ込みどころが多すぎた。ジャニオタの彼女は、自分の将来について真剣に考えていた。
「このまま結婚できずに孤独死は嫌だ」
分かる。分かるけど。出会い系。時代か。いや私の友達で他にも出会い系やってる子はいるけど、連れ込まれたり危ない目にあってるからやめた方が。
「気をつけてね、なんかあったら大変だし」
パンケーキをつつきながらこの場唯一の彼氏持ちのバンギャの友人は言う。ハワイで身内だけの結婚式をするんだと先程報告を受けたばかりだ。おめでとう。服や車を初めとした旦那(予定)の経済力を自慢しご満悦の彼女だが今日のメイクに突っ込みをいれていいのか迷う。意図的なのか分からない。下手に刺激しないほうが良いタイプの子なので黙るけれど。
「へー皆大変、私は別に二次元の推しと結婚したからいいし」
とりあえず公共の場で言うのはやめろ。頼むから。私はともかくこの二人はジャニオタとバンギャであって二次元のおたくじゃないんだよ。
私の内心の突っ込みをスルーして推しの語りを初める三人目の友人。二人が引いてるの分からないかな…?
「結婚したくないし彼氏もいらないんだけど、この前花見に行った時に男に手を繋がれたんだよね」
マジで何アピールなんだ。そうですか。感情を込めることもできずに呟いた。
「で、雪菜は?」
でたよ。こうなると思った。高校の時の女友達3人。一人はジャニオタ、一人はバンギャ、一人は二次元おたく、そして私。
「雪菜って人間好きになったことあるの?」
地獄だった。
***
「雪菜ちゃんが人間に興味持ってくれた事だけで嬉しい!」
2年半前、メルパルク大阪でまた別の高校の友人に言われた言葉である。普段私は友人と連番なんて事しないのだが、この時ばかりは珍しく友人と連番した。久々に再会した友人は某氏のおたくになっており、彼が出るならと数年ぶりに大阪で会うことになったのだ。
そこで私はとある俳優(通称・推しくん)を好きでいることを明かし、その返答がこれだっまた。
「コスプレとか2.5次元とかダメってずっと言ってたし人間ダメなのかと思ってたから本当に嬉しい…」
「いや、別にガチ恋とかじゃないからね」
「それでも興味を持てたことが凄いよ」
私は何だと思われているのだろう。記憶は更に遡る。
***
「雪菜って二次恋しかできないの?」
これはつい最近に中学の時の友人に言われた言葉だ。何だよ二次恋って。
あの頃の彼女はどこにいってしまったのだろう。彼女はその後声優のおたくになり、そこから声優を志し上京し挫折、そして今地元に戻って浮気性のヒモ彼氏とズルズルと関係を続けている。ちなみに上で書いた出会い系で連れ込まれたのは彼女。本当に無事に生きてて良かった。
「雪菜って恋したことあるの?ゲームとかじゃなくて、人間相手に」
真剣に疑問だと言わんばかりの声のトーンだ。笑ってごまかせなかった。
「まぁ雪菜ってそんな感じじゃん。本当昔から変わらないよね」
中学の時のもう一人の友達が言う。彼女は見るたびに顔が変わる。髪色も。街中で会ったら絶対気づかない。ってか普通に怖いから近付きたくない。彼女はオブラートに包むと中々ヤンチャをした子であり、ちょっとぶっちゃけると性欲の塊である。性病にかかったと打ち明けてきた時は「やっぱりか…」といった話題になった。大事には至らなくて何より。
そんな彼女も今や一児の母だった。毎日Twitterで旦那の愚痴を言っている。
「別に焦らなくてもいいと思うよ」
中学の時の三人目の友人。彼女は高校卒業した途端結婚して今は二児の母。誰がどう見ても普通のお母さんである。
あの頃は4人で色んな事を話していた。彼氏できる気がしない。結婚なんてしたくない。子ども?できるわけないじゃん。毎日くだらない話ばかりして、気づけば私だけが置いていかれてしまった。
私が変わらなかったんじゃなくて、皆が変わっちゃったんだよ。これが私の主張である。
恋ってなんですか。
***
「推しくんは恋愛対象とかじゃないしな…」
「普通の人と結婚願望は?」
「あるよ」
「あるの?!!人を好きになれないのに?!」
「い、いいじゃん…言うだけなら…」
話は戻って地元のカフェだ。ジャニオタ、バンギャ、二次元おたくの視線は私に注がれている。
「外に出ないと彼氏できるわけないじゃん」
正論である。いやある意味では外に出てるけど、そういう話じゃないのは分かる。
「今更なんかどうしたらいいのか分からないし、自己肯定感が低すぎて人に好かれる気が全くしない、こんな性格だし」
はっきり言って私は性格が本当にクソなのである。自分で見てもこんな人間絶対に御免だ。ついでに言うとチケット1枚でブチギレし大泣きし湯水のように金を使うタイプのおたくでもある。本当に人間として好かれる要素が皆無だ。
一連の話を聞いた二次元おたくの友人は何故か上から目線で私にアドバイスをする。いや正論だけど、君さ、別に恋愛経験ないよね?その言葉をぐっと飲み込む。っていうか、別に今すぐ結婚したいとかじゃない。願望があるかないかどっちか選べって話ならあるってだけの話なのに。何故いつもアドバイスしたがるのか?
「まぁそんなに悩んでるなら知り合いの占い師紹介しようか?」
出たよまた謎の勧誘。
彼女に会うとほぼ100%この手の話になる。実のところスピリチュアル方面が私は苦手だ。目に見えないものは信用してない。占いとか、UMAとか、宗教絡みとかなんかとにかくそっち系。もちろん自由な話なのでそれらを否定はしない。好きな人は好きな人で自由にしていればいいじゃないか。私は私と家族に影響さえなければ気にしない。けれど勧めないで、お願いだから。
もちろん丁重にお断りする。毎回無理だと言ってるのに懲りないな君は…。まぁでも、私は舞台という宗教にハマっているのだろう。それに間違いはない。
友人って何なんだろう。そう思いながらカフェを後にしたその足で地元のデパートに駆け込み予約していたデパコスを引き取った。コスメは優しいな。何も言わない。私を否定しない。肯定もしないが、ただ存在するだけで私のテンションと美意識だけを高くしてくれる。これだからコスメは大好きだ。
***
6月某日。
「本当に退団しちゃったんだなって……」
大泣きしてメイクが完全に落ちきっている友人を地元の映画館で慰める。
現地、行かなくて良かったの。むしろ私の方が行きそうだったけど。ついでに他にも日比谷に用事あったし。
そうは思うけどまぁそのあたりは個人の応援スタンスだし、私が何か言えたことではない。
心は無だった。無。終わったという感情。ぽっかりと空いた空虚。三ヶ月前の時のやり遂げた、といった気持ちと違うのは、やっぱり現地にいないからかな。いやきっとそれだけじゃないと思うけど。
よく分からない。
寂しい、と思う。寂しさと、なんだろうな。
それでも、最後に緞帳前に出てきた姿を見ることができたのは、救いだったと思う。
「雪菜は最後まで見たんでしょ、凄いね」
「まぁ、満足したかったし、運も良かったから」
「私もさ、お金貯めなきゃいけないんだよね。最近遠征しすぎだったからさ」
「そっか……」
ポツポツと友達と思いを吐き出してから、私にこの先の予定がある為早々と別れた。コンビニに駆け込んで今日が締め切りだった某ミュージカルのチケットの支払いをした。見たいのか、と聞かれたら答えられない。何してるのかな。自分でも分からない。
貯金か。その話する?
応援スタンスが学生時代の友達と合わない。
結構、これはしんどいものがある。俳優なりアイドルなり応援している友達はそこそこいるのに、何故か私とスタンスが合う子がいない。
気にしなきゃいいのに。ネットで知り合った人たちの応援スタンスなんて、特別視界に入らなきゃ気にもならない。でもリアルの友人となるとそうはいかない。いかないんですよ。悲しいことにね。
皆今何してるんだろ。私だけこんな事してるのかな。
***
6月某日。
「うわ」
うわ。そう。うっっわ。
別に特定しようとなんてしていない。偶然。事故。
学生の時の友人のTwitterアカウントを発見した。
彼女にリア垢というものはあった。知っていた。というか私にもある。学生時代のリアル友人達のみフォローしたLINEのように好きに使っている鍵アカウント。今から映画観れる人近所の映画館○時に集合〜!みたいなつぶやきをする目的で存在している。
彼女はそのアカウントを4年前くらいに突然消して、消息が分からなくなった。
アカウント消したという事はもう連絡したくないってことだろうなと思って、知っている筈のLINEで生存確認などをすることもなかった。他の友人も彼女の消息を知らないようだったのでそれ以上掘り下げることもなく、特別今まで彼女がいなくなった日々に不自由はなかった。
「それでも普通友達が年単位で音信不通になったら連絡の一つくらい取るもんじゃない?」普通はそう思うだろう。問題はその消え方だった。
彼女は元々腐女子の二次元おたくだったのだが、Twitterアカウントを消す前職場の先輩と突如付き合い始め、わかりやすく言うと恋愛脳になった。
「腐女子ってバカ」「そもそもおたくがバカ」「いつまでこんなことしてるの?」「グッズとか全部ゴミだよね」
リア垢に呟かれるツイート達。まぁ、彼女にも色々思うところはあったんだろう。「グッズ全部処分したんだ」みたいな話を聞いて、凄いねって返した。
おたくの私は彼女にとって良いサンドバッグだったのだと思う。「雪菜っていつまでそんなことしてるの?」となんだかよく分からない絡まれ方をして、私は「あぁ、彼氏ができたら人はこうなるのか」と思った。
「雪菜って服はゾゾタウンとしまむらとユニクロとGUで買いそう。コスメはキャンメイクで、後は@コスメの口コミで買ってるでしょ」
なんだその偏見。あんまり言うと私以外の人も不愉快な気持ちになりそうだからやめるけど、まぁなんか、そういう子だった。それである日、それがいつだったのかは私は知らないのだが、彼女はアカウントを消していなくなった。
彼女は生きていた。数時間前もゲームの話をしていた。
「お前まだおたくやんけ!!!」
思わず声に出して突っ込んだ。見たのが家で良かった。ついでに彼女はジャニーズの某方のりあこになっていた。
少しだけタイムラインを遡って、はははと笑ってからスッと真顔になり、見なかったことにした。
まぁ、生きてるならいいよ。
何だったんだろう。彼女という存在は。
仲のいい子だったのである。学生時代毎日つるむくらいに。二人組作って〜みたいな時に二人組作るくらいの仲、だったはず?多分…?
彼氏ができたら変わるんだろうか。それとも仕事か。元々こうだったのか。なんかもう、よく分からない。
ガチ恋を拗らせてガチ恋アカウントまで別に作っていたのを見て頭が痛くなった。彼氏はどうしたんだ。彼氏がいてもガチ恋というものはあり得るのか。それとも別れたのか。別にどうでもいいけど。でも散々この手のジャンルに砂かけした挙句この有様なのか。
君さ、あの時私に何て言った?
彼女が消える直前、別の共通の友人が「あの子、雪菜に対して酷いよね」とボソッと漏らしたことがある。
別に気にしてないよ。そう言った。そういう人だし。まぁ、浮かれてるんだろうなって思ってた。
それで今はこれか。
なんでこのタイミングでこれを見てしまったんだろう。数時間後に私は東京行きの新幹線に乗ることになり案の定体調を崩す。
とりあえず、Twitterの鍵はつけた方がいいんじゃない?私に分かるレベルだけどいいの?と思った。
まぁ、二度と会わないだろうし。別にいいよ。
***
6月某日。
「雪菜」
「…お疲れ」
何がお疲れなのか。雨だからか。場所は品川。ステラボール。地元から何百キロと離れた土地で地元の友人と会うことになる確率。いや同じジャンル追ってればそりゃあ会うか。私はどっちにしろ当日券目当てで遠征だし。彼女がその日のチケット持ってたら、まぁ、会うよね。
とにかく体調が悪すぎてフラフラであった。近くのホテルを取った自分に感謝。ケチってめちゃくちゃ古い所にしたから、正直「出そう」だけど。私には霊感なんてものはないし、霊以上に現場に入れないことの方が怖いから最終的にどうでもよくなってしまった。とりあえず立地も値段も文句なしなのでまた泊まると思う。なおここに来る直前に某脚本家のTwitterを見てしまい、「最近いただいたファンレターです」みたいな画像にバッチリ自分が先月キレながらプレボに突っ込んだ手紙を発見して便器とご対面した。私が何したってんだ。手紙出したのが悪い。
実のところ普段は絶対毒にも薬にもならない手紙しか書かないのにこの時だけはどうにも我慢ならなかったので結構微妙な感じの内容を出した…つもりだったけど出した手紙の画像データ見返してたらキレッキレで真顔になってしまった。本当すいませんでした。申し訳なくなって詫び状を書いた。
口の中が酸っぱい。頭は痛い。目眩も酷い。腹痛も酷い。とりあえず手持ちのイブを飲んで誤魔化す。飲まないよりはマシ。
「当日券、外れたから行くね」
「ステラボールにご用事の方は○○へお集まり下さい〜〜!」
私の声に被せるように発せられたスタッフの人の声を聞きながら、行けるものなら行きたいわと理不尽な怒りが湧く。
友人との会話は3分。本当に何してるんだろうな。待機場所でどうしようといった表情の友人に背を向けて品川駅に向かった。
どんな感情でいるのが正解だったんだろう。
***
6月某日。
走る。
メゾンドフルールのトートの耐久性、大丈夫かななんて考えながらとりあえず時間がなさすぎて走る。ミッシュマッシュの服は雨でグショグショ。思い出すのは高校の時のマラソン大会。苦しかった持久走…何故私はこの歳になってもこんな思いをしているのでしょうか?
応援していた大好きな彼女に久しぶりに会えた。二度と会えなくても構わない。そう思って別れたのに、また目の前に現れたあの人はあの時と何も変わらなかった。その喜びを噛みしめる余裕もなく終演直後に会場を飛び出しゆりかもめに乗り込んで息切れを起こす。心臓がうるさい。血の気が引いてあっ、これはやばいなと確信する。ポカリを飲んで息を整えて、でもだめかも、非常にこれは、よくない。
(〜ここからあまり記憶がない〜)
品川駅で隣に立っているお巡りさんに助けを求めようかギリギリまで迷って、やめた。
何してるんだろ自分。
ここで倒れたら誰が私を助けてくれるんだろう。
地元の幼馴染。お嬢様学校に通いたい。そして東京のOLになりたい。そんなざっくりとした夢を持っていた彼女は夢を叶えて今はお台場のOLだ。見事に精神を病んで病院と友達になっているようだけれど。彼女はすぐそこに住んでいるから私が呼んだらきっと飛んできてくれる。でも迷惑かけたくないな。この前も銀河劇場で体調崩した時に助けてもらったし。あの時もボロボロだった。まぁいいや、いざとなったら助けてもらおう。そう思うと元気が出た。
推しくんの舞台。手元のチケットを見る。しんどいな。前髪がべっとりと顔に張り付く。汗と雨。6月の、湿った空気。
***
6月某日。
某先生、凄かったんだな。
推しくんの舞台を見て、真っ先に出てきた感想がそれだった。某先生への信頼度がまた上がってしまった。
某の当日券に外れたら推しくんに会おう、なんて感じの事を考えていたら某の当日券には当然の如く外れ、推しくんの方の当券でめちゃくちゃ良席を確保できてしまった。最速で取ってた席より良いんだけど。嬉しいし有り難いけどこの時点でかなりモチベーション的には怪しかった。
けれど何よりの肝心の内容は、本当に某先生への信仰と信頼を深めただけだった。
推しくんのファンってこれに通わなきゃいけないのか、可哀想に…。
何故か他人事になって同担に同情した。自分も他にチケット取ってた気がするけど。あんまり考えないようにしよう。
下手に知っているからだろうか。比較するものがなければ案外受け入れられたかもしれない。でも某先生のを知っている。題材が同じなら比較してしまう。
終わった後に同担と思われるおたく達が反省会っぽい事していた。
「顔は良い」聞こえたその言葉にめちゃくちゃ心の中で同意した。顔は良いよな。分かるわ。
とりあえず、地元に戻ったら私も反省会をしよう。一人で。
久々にお腹が空いて近くのコンビニでおにぎりを二個買った。ここ最近ゼリーばかり食べていたから新鮮だった。
***
6月某日。
ふっっっっざけんなよな。
最高だったよ。最高でした。文句なし。この為に私は頑張ってたの。最高だった。
問題は近くの席の女だよ。
通路席だったから、通路挟んで斜め後ろ。ずっと小声でなんか言ってた。可愛いとか、なんかそういうやつ。あと袋ガサガサしてた。う、うるせーーーーー!!!家でやれよ?!!!なんで隣の友達っぽい人も何も言わないんだよ?!注意したくても遠いんだよ!!!こっちは!!!どんな!!!思いで!!!ここまで来たと!!!!チケットを取ったと!!!!!!!
しかも同担。キャラクター的な方面。
く、クソ………クソめ……………この(規制)(規制)(規制)(規制)
でも私が見たかったものを見ることができたのでオッケーです。私の心が海よりも広くて良かったな。
最高だったよ。行って良かった。
***
「戻ってきてたんだ。お土産は?」
出たよ。ノックもなしに人の部屋に乱入する奴。
「日比谷に寄る余裕がなかったから、今回はないよ」
こいつは顔の良い美しい人の写真さえ与えていれば黙るのだが、そこまで頭が回らなかった。
「一年くらい向こうでゆっくりしてたら良かったのに」
「もー無理。己の体力と精神力に限界を感じた。大体便器と向き合ってた。移動中の記憶が特に皆無。まぁ現場の記憶も消えてるけど」
「有給どんだけあんの?使いすぎじゃない?」
「そうだよ。計算しないとまずい」
「で、見たの」
「まぁ、色々あって」
ざっくりと経緯を話して、目の前の奴は非常にどうでも良さそうにする。
「そんなに見たい?」
「もう分からん、でも見れたからいいや。でも、これ10月にも思ったけどアビスみたいって思った」
「テイルズ」
「いやもう最後にやったの10年くらい前だし全然覚えてないけど、これとルークとアッシュの違いについてずっと考えてた」
「必死さでしょ」
「あっそれだわ、なんか前もこの話した気がするね?メモっとく」
「あいつって俺によく似てるから、分かるよ」
「えっなに、アッシュ?」
「じゃない方。お前がさっき2.5で会った方。プライド高くて、常に自分が上だと思い込もうとしてる感じとか、そこが滑稽に見えるところ。だから俺は好きだけど」
部屋の中にある沢山の彼(二次元)のグッズ。その中でも一際目立つ壁にかけられたタペストリーを見ながら奴は笑った。私は毎日このタペストリーを見ながら「顔が良すぎる…」とつぶやいているのだけれど、奴はそれを見て「たった4000円でそこまで毎日楽しめるのは凄い」と褒めてきた。馬鹿にするニュアンスしかないので褒められてないです。
「次は何枚円盤積むの?」
「秘密だわ。言えるわけない。墓まで持ってく」
「姉さんって馬鹿だよね」
外からは何かにキレている声が聞こえる。
「避難しとこ、関わるとロクなことにならない」
同意だ。姿を見せた途端巻き込まれる。
部屋に戻る姿を見送るとやはりタペストリーと目が合う。
好き。好きです。ええ好き。
『それだけで十分だったんだ』
その一言が聞きたかった。ずっと。
夢女子ではない。ただ好き。別にだから何というわけではない。私がただ好きなだけ。
私も、本当はそれだけで十分なんだよね。
好きだよ。
***
大体の6月はこんな感じ。
いや、フィクションだって。
深夜のテンションじゃないと載せられないような代物なのでこっそり消してたらごめんね。
本当は某アイドルの新メンバー加入や握手会の話もねじ込む予定でしたが、一万文字超えそうなのでやめました。